老執事の肖像 坊ちゃんは、小さな頃から絵を描くことが好きでした 坊ちゃんは、何でも塗りつぶしてしまわれるものですから 旦那さんは、坊ちゃんには絵の才能が無いと仰いました ですが、私は坊ちゃんの直向きさがとても好きでした 坊ちゃんはきっと、立派な画家になられることでしょう 惜しむらくは、この老執事 成人した坊ちゃんをご覧になれないことです (或る老執事の手記より) “過ぎ去る日は、ゆら ゆら あの日々は瞬いて 喜びも悲しみも、眠りの中、ゆめ ゆめ” 病に伏せる私を、どうかお気になさらずに 坊ちゃんは変わらず、お好きな絵をお描き下さい 人は好きな事をするのが最高に幸せなのです こんな事を申し上げると、旦那様のお叱りを受けますが 最期になりますが、一つだけお願いがございます これまでお描きになった絵を、最期にもう一度お見せ下さい (或る老執事の手記より) 部屋中に飾られた思い出の欠片たち 全てを集めたなら 老執事の肖像 “過ぎ去る日は、ゆら ゆら あの日々は瞬いて 喜びも悲しみも、眠りの中、ゆめ ゆめ”