[00:46.993]月が、静かに微笑む夜
[00:52.806]遠い昔の人たちもまた
[00:56.244]この月を、こんなふうに眺めていたのか
[01:01.394]と、私の心は
[01:05.881]時間を越えて、旅にでる
[01:12.707]嘘か、本当か
[01:16.722]一つ、こんな話がある
[01:23.519]むかしむかし、ある星で
[01:26.735]一つの言語が栄えていた
[01:31.485]人々はなんでも言葉を持って言い合えたので
[01:35.872]好きなことを言い
[01:38.633]好きなように噂し
[01:41.595]容赦なく、誰かを傷つけた
[01:48.658]争いと慰めが
[01:50.497]言葉によって繰り返されていたある日
[01:54.221]気づけば、大切な人を
[01:57.708]自らの言葉によって傷つけてしまったことに
[02:02.134]自らもまた、傷ついた1人が
[02:07.159]天を仰いで、願ったという
[02:14.009]“言葉は私達が思う以上に威力がありすぎる
[02:18.972]時に奔放で
[02:21.597]時に実際の気持ちとはすこし違った印象でもあり
[02:27.560]取り返しのつかないことを招くこともある
[02:32.810]どうか私に
[02:35.498]悲しみや優しさ、怒りや愛という感情を
[02:42.410]もっとその思いのままに、高調することもなく
[02:47.911]それ以上でも、それ以下でもなく
[02:52.085]表現するてだてを、授かることはできませんか?
[03:02.649]青が青ではなく
[03:04.412]何千もの青があるように
[03:08.111]私の悲しみは
[03:10.636]彼女の悲しみとは
[03:13.324]まったく違う、色なのです
[03:20.361]赤が赤ではなく
[03:23.219]何千もの赤があるように
[03:26.274]私の愛情は、私でしか出せない色なんです
[03:34.612]その色を、その思いを、表す術を
[03:41.962]授かることはできませんか?”
[03:52.875]願い続けた果に、彼の口から言葉は消え
[03:59.539]心の中に、ただその思いだけが
[04:04.301]色となって残っていた
[04:10.390]ある晩のこと、沈黙を守っていた彼のその口から
[04:15.914]美しいメロディーが流れ出した
[04:21.114]その歌声は
[04:23.539]言葉では到底、例えようもないほど美しく、切なく
[04:32.503]そして愛に満ちていました
[04:40.340]それが、月が初めてきいた
[04:44.740]この星に響いた歌声だったとか
[04:50.728]悲しみや、絶望の淵にも
[04:54.678]愛を見出そうとした彼の心から生まれた
[04:59.141]その世界ではじめての音楽
[05:04.378]嘘か、本当か
[05:10.066]どこかのホシで、そんな話があったという
[05:19.210]月が静かに微笑む夜
[05:22.679]そのホシの人たちもまた
[05:26.541]この月を、こんなふうに眺めていたのか
[05:31.179]と、私の心は
[05:36.130]時間を越えて、旅にてる
[05:43.992]