[00:00.00]わたし、屋上で靴を脱ぎかけた時に
[00:06.15]三つ編みの先客に、声をかけてしまった。
[00:10.71]「ねえ、やめなよ」
[00:14.15]
[00:21.88]口をついて出ただけ。
[00:24.36]ホントはどうでもよかった。
[00:26.57]先を越されるのが、
[00:28.84]なんとなく癪だった。
[00:30.94]三つ編みの子は、語る。
[00:33.56]どっかで聞いたようなこと
[00:35.82]「運命の人だった。
[00:38.01]どうしても愛されたかった」
[00:39.81]
[00:40.16]ふざけんな!
[00:42.06]そんなことくらいで
[00:44.65]わたしの先を越そうだなんて!
[00:49.15]欲しいものが
[00:51.24]手に入らないなんて
[00:53.80]奪われたことすらないくせに!
[00:58.32]「話したら楽になった」って
[01:00.59]三つ編みの子は、消えてった。
[01:03.79]
[01:07.47]さぁ、今日こそは と 靴を
[01:10.09]脱ぎかけたらそこに
[01:12.26]背の低い女の子
[01:14.57]また声をかけてしまった。
[01:16.62]背の低い子は、語る。
[01:19.25]クラスでの孤独を
[01:21.49]「無視されて、奪われて
[01:23.67]居場所がないんだ」って
[01:25.64]
[01:25.87]ふざけんな!
[01:27.80]そんなことくらいで
[01:30.34]私の先を越そうだなんて!
[01:34.84]それでも、
[01:36.93]うちでは愛されて
[01:39.36]あたたかいごはんもあるんでしょ?
[01:44.07]「おなかがすいた」と 泣いて
[01:46.24]背の低い子は、消えてった。
[01:49.09]
[01:49.49]そうやって、何人かに
[01:53.35]声をかけて
[01:55.53]追い返して
[01:57.87]わたし自身の痛みは誰にも言えないまま
[02:06.67]
[02:16.07]初めて見つけたんだ。
[02:18.67]似たような悩みの子
[02:21.00]何人目かにあったんだ
[02:23.17]黄色いカーディガンの子
[02:25.45]「うちに帰るたびに、
[02:27.84]増え続ける痣を
[02:30.07]消し去ってしまうため
[02:32.25]ここに来たの」と 言った。
[02:34.72]口をついて出ただけ。
[02:36.98]ホントはどうでもよかった。
[02:39.21]思ってもいないこと
[02:41.48]でも、声をかけてしまった。
[02:43.87]「ねぇ、やめてよ」
[02:46.65]
[02:48.00]ああ、どうしよう
[02:50.15]この子は止められない
[02:52.68]わたしには止める資格が無い。
[02:57.18]それでも、
[02:59.24]ここからは消えてよ。
[03:01.72]君を見ていると苦しいんだ。
[03:06.29]「じゃあ今日はやめておくよ」って
[03:08.66]目を伏せたまま消えてった。
[03:11.81]
[03:13.57]今日こそは、誰もいない。
[03:15.70]わたしひとりだけ
[03:17.93]誰にも邪魔されない
[03:20.06]邪魔してはくれない。
[03:22.50]カーディガンは脱いで
[03:24.72]三つ編みをほどいて
[03:27.00]背の低いわたしは
[03:29.38]今から飛びます